
SIMフリー端末は海外で使える?国内版の可否と法人の通信手段を解説
海外出張が決まった社員から「今使っている社用スマホをそのまま持って行っていいですか」と聞かれ、答えに迷った経験はないでしょうか。SIMフリー端末という言葉は知っていても、渡航先で本当に通信できるのか、現地でSIMカードを買わせるべきなのか、費用はどう精算するのかまで整理できている企業は多くありません。結論からお伝えすると、国内版のSIMフリー端末であっても、渡航先の対応周波数帯に合っていてSIMロックがかかっていなければ、海外で利用できる可能性は十分にあります。ただし、つながるかどうかという技術的な条件と、会社として運用しやすいかどうかという実務的な条件は別の話です。この記事では、出張前に確認しておきたいチェックポイント、海外で使える4つの通信手段の違い、そして総務・情報システム部門の手間まで含めた法人回線の選び方を順に解説します。
目次
SIMフリー端末は海外でも利用できる
最初に結論をお伝えします。SIMフリー端末は、条件を満たしていれば海外でも利用できます。ここでいう条件とは、渡航先の通信事業者が使っている周波数帯に端末が対応していること、そしてSIMロックがかかっていないことの2点です。この2つが揃っていれば、現地のSIMカードに差し替えて使うことも、日本の回線のまま国際ローミングで使うこともできます。
一方で、「SIMフリーだから世界中どこでも問題なくつながる」と考えてしまうと、現地に着いてから通信できないという事態になりかねません。SIMフリーという言葉が保証しているのは、通信事業者による利用制限がないことであって、あらゆる国の電波に対応していることではないためです。ここを取り違えたまま社員に端末を持たせると、到着後の連絡手段そのものが失われてしまいます。まずは用語の意味を正確に押さえるところから始めましょう。
SIMフリー端末とは特定の通信事業者に縛られない端末のこと
SIMフリー端末とは、特定の通信事業者のSIMカードしか使えないという制限がかかっていない端末のことです。SIMカードには契約者の情報が記録されており、端末に挿すことでその回線を使った通信ができるようになります。この組み合わせを自社の回線に限定する仕組みがSIMロックで、その制限がない状態がSIMフリーです。
制限がないため、国内の別の通信事業者に乗り換える際も端末をそのまま使えますし、海外で現地のSIMカードを購入して差し替えることもできます。法人にとっては、回線の見直しと端末の買い替えを切り離して検討できる点が大きな利点です。SIMフリー端末の仕組みやメリット、確認方法については、次の記事でくわしく解説しています。基本から整理したい場合は併せてご覧ください。
2021年10月以降に販売された端末は原則SIMフリー
自社の端末がSIMフリーかどうかを判断するうえで、目安になる時期があります。総務省は2021年8月に「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」を改正し、2021年10月以降に発売されたスマートフォンについては、SIMロックをかけて販売することを原則として禁止しました※1※2。乗り換えの障壁を下げ、通信事業者間の競争を促すことが目的とされています。
つまり、比較的新しい社用端末であれば、特別な手続きをしなくてもそのまま海外へ持ち出せる可能性が高いということです。ただし、この原則には注意点もあります。2021年9月30日以前に発売されたモデルが、その後も継続して販売されている場合があるためです※1。発売時期と購入時期は一致しないため、「最近買った端末だから大丈夫」とは限りません。社内の貸与台帳で機種名と購入時期を確認したうえで、後述する手順で端末側の状態を実際に見て判断することをおすすめします。
なお、NTTドコモビジネスオンラインショップの機種一覧ページでは、各機種のスペックや価格と併せて発売時期も確認できます。手元の端末がいつ発売されたモデルなのかを調べる際にご活用ください。
国内版SIMフリー端末を海外で使用する場合の前提条件
ここで、法人の担当者が最も迷いやすい論点を整理します。ひとくちにSIMフリー端末といっても、日本国内向けに販売された国内版、海外市場向けに販売された海外版、通信事業者から購入してSIMロックを解除した端末という3つのタイプがあり、海外で使う場合に差が出やすいのは対応している周波数帯の範囲です。
国内版のSIMフリー端末は、日本国内の通信事業者が使う周波数帯を中心に設計されていることが一般的です。国内で使う分には各社の動作確認が取れていて安心感がある一方、渡航先の通信事業者が使う周波数帯に対応していない場合、電波が届いていても端末側がつかめないという状態になり得ます。海外版の端末は幅広い周波数帯に対応しているものが多い反面、日本国内で使う際に技術基準適合証明の有無を確認する必要があります。通信事業者から購入してSIMロックを解除した端末は、販売した事業者の周波数帯に寄せて設計されている場合があります。
いずれのタイプであっても、海外で使えるかどうかを分けるのは「SIMフリーかどうか」ではなく「渡航先の周波数帯に対応しているかどうか」です。この前提を押さえたうえで、出張前に何を確認すべきかを次の章で具体的に見ていきます。
海外で使う前に確認したい4つのチェックポイント
社員に端末を持たせる前に、担当者側で確認しておきたい項目は大きく4つあります。通信できるかという技術面が2つ、業務で支障なく使えるかという運用面が2つです。出張のたびに個別に調べ直すのは負担が大きいため、社内の出張準備の手順書に組み込んでおくと確認漏れを防ぎやすくなります。
渡航先の対応周波数帯(バンド)に合っているか
4つの中で最も重要なのがこの項目です。周波数帯(バンド)とは、電波が通る道のようなものだと考えるとわかりやすくなります。携帯電話の電波は限りある資源であるため、どの帯域をどの用途に使うかは国ごとに定められており、日本国内でも総務省が通信事業者ごとに周波数を割り当てています※3。この割り当ては国によって異なるため、日本で使われている帯域と渡航先で使われている帯域が必ずしも一致しないという構造になっています。
端末側は、対応しているバンドの電波しか受け取れません。したがって、現地の通信事業者が使っているバンドと端末の対応バンドが重ならない場合、その事業者の電波が届いている場所であっても通信できないことがあります。逆に、いくつかのバンドが重なっていれば通信自体はできますが、対応する帯域が少ないほど、建物の中や郊外でつながりにくくなる場合があります。総務省も、通信事業者を乗り換える際に端末の通信方式と周波数帯が合っているかを確認するよう案内しており※4、これは海外で使う場合にも同じ考え方が当てはまります。
出張者から「現地でつながらない」と連絡が来てから調べ始めると、時差の関係もあって対応が後手に回ります。出発前にバンドの適合を確認しておくことが、海外出張の通信トラブルを減らすうえで最も効果的です。
対応バンドの調べ方
確認の手順そのものは難しくありません。まず、端末メーカーのオフィシャルサイトで機種名を検索し、製品仕様のページを開きます。仕様表の中に「対応周波数帯」「対応バンド」「通信方式」といった項目があり、5GやLTEごとに対応する帯域が記載されています。この内容を控えておき、渡航先の通信事業者が公開している対応周波数の情報と照らし合わせます。
同じ機種名でも、販売された国や販売時期によって対応バンドが異なる場合があります。そのため、手元の端末の型番まで含めて仕様を確認することが大切です。なお、仕様表の記載だけで実際の通信可否を断定することは難しいため、渡航先の通信事業者が公開している情報や、渡航先で利用予定のサービスの動作条件も併せて確認しておくことが望ましいといえます。
SIMロックが解除されているか
バンドの次に確認したいのが、端末にSIMロックがかかっていないかどうかです。前述のとおり2021年10月以降に発売された端末は原則としてSIMロックがかかっていませんが、それ以前の端末を継続して使っている場合や、中古で調達した端末を業務に使っている場合は、実機での確認が確実です。
iPhoneの場合は、設定アプリを開いて「一般」から「情報」へ進み、画面内の「SIMロック」の項目を確認します。ここに「SIMロックなし」と表示されていれば、制限がかかっていない状態です。Androidの場合は機種によって階層が異なりますが、設定アプリの「デバイス情報」や「端末情報」から「SIMカードステータス」「SIMロックの状態」といった項目を探すと確認できることが多くなっています。表示される項目名は機種やOSのバージョンによって変わるため、見当たらない場合は設定内の検索機能で「SIM」と入力して探すと見つけやすくなります。
解除が必要だと分かった場合の具体的な手続きについては、次の記事で解説しています。台数が多い場合は、出張の直前ではなく計画段階で着手しておくと安心です。
eSIMに対応しているか/デュアルSIM運用ができるか
3つ目は、端末がeSIMに対応しているかどうかです。eSIMは端末にあらかじめ内蔵されたSIMのことで、カードを差し替える代わりに、通信事業者の情報をデータとして端末に書き込んで使います。物理的なカードを抜き差ししないため、現地の空港でSIMピンを探したり、日本のSIMカードを紛失しないよう保管したりする必要がありません。
法人にとって見逃せないのが、デュアルSIM運用ができる点です。物理SIMに日本の回線を挿したまま、eSIMで現地の回線を追加すれば、日本の電話番号での着信を受けられる状態を保ちながら、現地のデータ通信を利用できます。出張中に取引先や社内から日本の番号へ電話がかかってきても取り逃さずに済むため、営業担当者が渡航するケースでは特に有効な運用方法です。ただし、対応の可否や同時に待ち受けできる回線数は機種によって異なるため、事前に仕様を確認しておく必要があります。
SIMカードの種類やeSIMの仕組みについては、次の記事で図解を交えて整理しています。社内で端末を選定する際の参考にご覧ください。
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SIMカードとは?物理SIMとeSIMの違い・種類をわかりやすく解説
スマホや携帯電話でのモバイル通信になくてはならない「SIM(シム)」について、基礎知識や種類、選び方などをわかりやすく解説します。
なお、NTTドコモビジネスオンラインショップの機種一覧ページでは、「eSIM対応」の条件で機種を絞り込むことが可能です。社内の端末がeSIMに対応しているか、対応機種にはどのようなものがあるかを洗い出す際にご活用ください。
業務アプリや端末管理の設定が現地でも支障なく動作するか
4つ目は、法人ならではの視点です。通信さえできれば業務が回るとは限りません。社用端末にMDM(モバイルデバイス管理、端末を遠隔から一括で管理する仕組み)を導入している場合、現地のSIMに差し替えると、想定していた設定が意図したとおりに反映されない場合があります。回線に紐づいた制御を組み込んでいる環境では特に注意が必要です。
同様に、社内システムへのアクセス制限を接続元で判定している場合や、業務アプリの認証にSMSを利用している場合も、回線が変わることで挙動が変わる可能性があります。出張者が現地で業務システムにログインできないと、代わりの手段を用意するまで業務が止まってしまいます。
こうした事態を避けるには、実際に運用する構成で事前に検証しておくことが有効です。渡航前に情報システム部門で1台テストし、現地の回線に切り替えた状態でも業務アプリと端末管理が想定どおり動作するかを確認しておくと、現地でのお問い合わせを大きく減らせます。MDMの機能や選定のポイントについては、次の記事で解説しています。
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海外出張で使える通信手段4つと選び方
端末側の確認が済んだら、次はどの通信手段を使うかを決める段階です。海外で使える方法は大きく4つあり、それぞれ向いている出張の形が異なります。このとき比較の軸をコストだけに置いてしまうと、あとから総務や経理の工数として跳ね返ってくることがあります。手配のしやすさ、現地での設定の難易度、経費精算のしやすさ、トラブル時に誰が対応するのかという点まで含めて見比べていきましょう。
現地SIMカードを購入して差し替える
1つ目は、渡航先に到着してから現地のSIMカードを購入し、日本のSIMと差し替えて使う方法です。空港の到着ロビーや通信事業者の店舗、コンビニエンスストアなどで購入でき、旅行者向けの短期プランが用意されている国も多くあります。データ通信の単価を抑えやすく、長期滞在や特定の国へ繰り返し出張するケースでは選択肢に入ります。
実務面で押さえておきたいのは、社員が現地で行う作業が複数あるという点です。購入時には店舗でのやり取りやパスポートの提示を求められる場合があり、購入後にはAPN設定(通信事業者のネットワークへ接続するための設定)が必要になることもあります。併せて、抜き取った日本のSIMカードを紛失しないよう保管しておく必要もあります。物理的に小さいため、出張中の紛失は起こり得るトラブルです。
会社側の視点では、支払いの流れも確認しておきたいところです。現地での購入は出張者による立替払いになりやすく、法人としての一括請求にはならないケースが一般的です。この点が精算工数にどう影響するかは、後の章で詳しく取り上げます。なお、現地SIMカードそのものはNTTドコモビジネスオンラインショップでは取り扱っていないため、この方法を選ぶ場合は出張者が現地で手配することになります。
渡航前に海外向けeSIMを契約する
2つ目は、出発する前に海外向けのeSIMをオンラインで契約しておく方法です。渡航前に手続きを済ませられるため、現地に到着した時点ですぐに通信を開始できる点が特徴です。物理カードの受け取りや差し替えが発生せず、日本のSIMを抜かずに済むため、現地SIMと比べて出張者の手間は少なくなります。
一方で、確認しておきたい条件もあります。利用できるのはeSIMに対応した端末に限られるため、社内の端末が混在している場合は機種ごとに可否を調べる必要があります。また、契約は渡航する国や地域ごとに必要になることが多く、複数国を回る出張では対象地域を含むプランを選ぶか、国ごとに契約を追加する対応が求められる場合があります。データ通信専用で電話番号が付かないサービスもあるため、現地での音声通話を想定している場合は仕様の確認が必要です。
海外用Wi-Fiルーターをレンタルする
3つ目は、海外用のモバイルWi-Fiルーターをレンタルして持って行く方法です。1台のルーターに複数の端末を接続できるため、複数名で渡航する場合や、スマートフォンとノートパソコンの両方を使う場合に向いています。接続はパスワードの入力やQRコードの読み取りで完了することが多く、端末側の設定を変更せずに使える点も扱いやすさにつながります。
ただし、運用上の手間は増えます。出発前の受け取りと帰国後の返却が必要で、滞在中はルーター本体と充電器を持ち歩き、こまめに充電しなければなりません。持ち歩く機器が増えるぶん、置き忘れや破損のリスクも生じます。また、複数名で1台を共有する場合、同行者と別行動になった時点で、ルーターを持っていない側は通信できなくなります。空港からホテルへ別々に移動する場面や、訪問先が分かれる日程では影響が出やすいため、行動予定と合わせて判断することが大切です。
日本の回線のまま国際ローミングを利用する
4つ目は、日本で契約している回線をそのまま海外で使う国際ローミングです。SIMの差し替えや現地での購入手続きは不要です。渡航前にWORLD WINGの契約状況を確認し、現地ではデータローミングを有効にします。
法人利用と相性が良いのは、手配・設定・精算・サポートのすべてが日本国内の契約の中で完結する点です。回線の契約はすでに社内にあるものを使うため、出張のたびに新しく申し込む必要がありません。利用料も既存の法人契約に合算されるため、出張者の立替払いや領収書の回収が発生しません。現地でつながらないといった問題が起きた場合も、契約している通信事業者の窓口に相談できます。
かつては国際ローミングというと利用量に応じた費用の読みにくさが課題になりやすい面がありましたが、現在は海外での利用があらかじめ料金プランに組み込まれているものもあります。たとえばNTTドコモビジネスの法人向け料金プラン「ドコモBiz データ無制限」では、月間で利用できるデータ量のうち海外200以上の国・地域で最大30GB・15日まで、追加料金なしで利用できます。出張のたびに追加の申し込みや設定変更をしなくても、契約しているプランの範囲内で海外の通信をまかなえる形です。対象となる国・地域や適用条件は変更される場合があるため、最新の内容は公式ページでご確認ください。
また、国際ローミングを利用できるのはドコモBiz データ無制限に限りません。NTTドコモビジネスオンラインショップで取り扱う料金プラン「ドコモ MAX」でも、海外200以上の国・地域で最大30GB・15日まで、追加料金なしでデータ通信を利用できます。対象となる国・地域や適用条件は変更される場合があるため、最新の内容は次のページでご確認ください。
4つの通信手段の比較表
ここまでの内容を、会社としての運用のしやすさという観点で整理します。費用の単価だけでなく、誰がどれだけ動くことになるのかを並べて見ると、判断の材料が変わってきます。
| 比較軸 | 現地SIMカード | 海外向けeSIM | 海外用Wi-Fiルーター | 国際ローミング |
|---|---|---|---|---|
| 手配の手間 | 現地に到着してから購入する | 渡航前にオンラインで契約する | 出発前の受け取りと帰国後の返却が必要 | 既存契約のため追加の手配は不要 |
| 設定の難易度 | SIMの差し替えとAPN設定が必要な場合がある | 渡航前にプロファイルを設定する | ルーターに接続するだけで使える | データローミングを有効にする程度 |
| 経費精算のしやすさ | 出張者の立替払いになりやすい | 契約方法により立替が生じる場合がある | 法人契約でまとめられる場合がある | 既存の法人契約に合算される |
| 日本の番号での着信 | 差し替え中は受けられない | デュアルSIM運用なら維持できる | 端末側の設定によって異なる | そのまま受けられる |
| サポート体制 | 現地の事業者への問い合わせになる | 契約したサービスの窓口へ問い合わせる | レンタル事業者の窓口へ問い合わせる | 国内の契約窓口へ相談できる |
短期の出張が定期的に発生する企業であれば、手配と精算の工数が毎回積み上がらない国際ローミングが扱いやすい選択肢の一つです。一方、特定の国に長期滞在する場合や、現地で音声通話を多用する場合は、現地SIMや海外向けeSIMを組み合わせる運用が合うこともあります。
現地SIM・eSIMを法人で使う際に見落とされやすい負担
通信手段を選ぶ場面では、どうしても1回あたりの通信費に目が向きがちです。しかし、現地での購入を前提にした運用は、出張者本人には見えにくい形で、総務や経理、情報システム部門の作業として工数が発生します。これは製品やサービスの優劣の話ではなく、社内のどこに手間が移るかという構造の話です。ここでは、実際に運用してから気づきやすい4つの負担を整理します。
立替払いと領収書精算による経理部門の負担
まず挙がるのが経費精算です。現地でSIMカードを購入する運用では、支払いが出張者ごとの立替払いになりやすく、その分だけ精算処理の件数が増えます。1人あたりの金額は大きくなくても、出張者が10人いれば10件の申請が発生します。
さらに、海外での支払いには為替が絡みます。現地通貨で購入した場合、社内規程に沿って円換算する必要があり、適用する為替レートの根拠も揃えなければなりません。現地の店舗で受け取った領収書が、日本の経理処理で求められる記載内容を満たしていないケースもあり、その確認と差し戻しにも時間がかかります。領収書そのものを受け取り損ねていれば、精算のたびに出張者へ確認を取ることになります。
これに対して、日本の法人契約に利用料が合算される形であれば、通信費は毎月の請求としてまとめて処理できます。出張者が申請書を書く必要も、経理が1件ずつ確認する必要もありません。出張の頻度が高い企業ほど、この差は毎月の作業量として積み上がっていきます。
時差のある環境での設定トラブル対応
次に、現地でのトラブル対応です。現地SIMに差し替えたあと、APN設定でつまずいたり、うまくネットワークにつながらなかったりする場面は起こり得ます。このとき出張者が頼るのは、多くの場合、社内の情報システム担当者です。
問題は、その連絡が現地時間で入ってくることです。渡航先によっては日本が深夜や早朝にあたり、社内の担当者がすぐに応答できないことがあります。情報システムの担当が数名という体制であれば、日中の通常業務と並行して海外からのお問い合わせに備え続けるのは現実的ではありません。担当者の努力で解決する問題ではなく、対応できる時間帯が限られるという体制上の制約として捉える必要があります。
対応が翌営業日にずれ込めば、その間、出張者は現地で連絡手段を持たないまま過ごすことになります。商談や移動の予定が入っていれば、業務そのものへの影響も避けられません。現地で行う設定作業を減らしておくことは、情報システム部門の負担軽減であると同時に、出張者が業務を止めないための備えでもあります。
情報漏えいリスクと海外での端末紛失
3つ目は、セキュリティに関する論点です。現地での通信手段が確保できていないと、出張者はホテルや空港、カフェの無料Wi-Fiに接続して業務を進めようとします。総務省は、公衆無線LANの利用について通信内容の盗聴や詐欺被害を受ける場合があると注意を促しており、接続先のアクセスポイントを十分に確認すること、通信が暗号化されているかを確認することなどを推奨しています※5。悪意を持って設置された偽のアクセスポイントに接続してしまうと、業務上のIDやパスワードが第三者に渡る可能性があります※6。
もう1つが端末の紛失です。海外では移動と荷物の出し入れが増えるうえ、慣れない環境で置き忘れや盗難に遭うリスクも高まります。このとき、遠隔でロックや初期化ができる仕組みを事前に用意していないと、業務データが端末に残ったままの状態が続いてしまいます。日本にいれば通信事業者の窓口へ駆け込むこともできますが、渡航先からでは取れる手段が限られます。
特に、金融、医療、士業のように顧客情報の取り扱い基準が厳しく定められている業種では、端末1台の紛失が報告義務や信用の問題に直結する場合があります。海外出張の頻度が高い企業ほど、端末側の備えを出張前提で設計しておくことが重要です。オフィスや外出先でのWi-Fi利用時の注意点については、次の記事でも整理しています。
帰国後の設定戻し忘れによる想定外の通信料
4つ目は、帰国後に起こりやすい見落としです。現地SIMや海外向けeSIMを使う運用では、出国時と帰国時に端末側の設定を切り替える作業が発生します。このとき、データローミングのオンとオフの切り替えを忘れたまま使い続けると、想定していなかった通信料が発生する場合があります。
厄介なのは、この作業が出張者一人ひとりの手元で完結してしまう点です。社内でルールを定めていても、帰国直後の慌ただしい状況では確認が後回しになりやすく、運用ルールだけで完全に防ぐことは簡単ではありません。請求が届いて初めて気づいたという事態も起こり得ます。
裏を返せば、出国時も帰国時も端末側の設定を切り替える必要がない運用にしておけば、この種の手戻り自体が発生しにくくなります。海外での利用があらかじめ料金プランに含まれている形であれば、出張者に求める操作を最小限にとどめられます。
海外出張がある企業に適した法人回線・端末の選び方
ここまで見てきた負担は、出張者個人の注意深さで解消できるものではありません。海外出張が定期的に発生する企業であれば、出張のたびに個別対応するのではなく、会社の仕組みとして通信手段を用意しておくほうが、結果的に手間も費用のばらつきも抑えやすくなります。ここからは、回線と端末をどう選べば運用が安定するかを整理します。
海外ローミングが標準で使えるプランを軸にする
仕組み化の起点になるのは、料金プランの選び方です。海外でのデータ通信があらかじめ含まれているプランを主回線に据えておけば、出張が決まってから通信手段を手配するという工程そのものがなくなります。
NTTドコモビジネスの法人向け料金プラン「ドコモBiz データ無制限」は、その考え方に沿って選べるプランの一つです。月間で利用できるデータ量のうち、海外200以上の国・地域で最大30GB・15日まで、追加料金なしで利用できるとされています。渡航のたびに現地でSIMカードを購入する必要も、日本のSIMを抜いて保管する必要もありません。出張者が現地で行うのは端末の電源を入れることだけで、日本の電話番号のまま着信を受けられます。
費用面でも、国内の日常業務に無駄が出にくい設計になっています。ドコモBiz データ無制限は月のデータ使用量に応じて料金が変わる段階制になっており、外出やWeb会議が多い月とオフィス中心で通信量が少ない月の差を、そのまま料金に反映できます。テザリングを使う機会が多い働き方でも、通信量を気にせず使える形を選べます。併せて「ドコモBiz かけ放題」を契約すれば、通話料の変動をなくしてコストを固定化できるため、部署や役割に応じてプランを組み合わせる運用も可能です。
なお、対象となる国・地域や適用されるデータ量、日数などの条件は改定される場合があります。社内で稟議を進める際は、最新の適用条件を公式ページでご確認いただくことをおすすめします。
また、法人で契約できる料金プランには「ドコモ MAX」もあります。ドコモ MAXでも海外200以上の国・地域で最大30GB・15日まで追加料金なしでデータ通信を利用できるため、社内の利用実態に合わせてプランを選択できます。
必要に応じて現地eSIMを併用するデュアルSIM運用も可能
主回線を海外ローミングが使えるプランにしたからといって、ほかの手段を使えなくなるわけではありません。SIMフリー端末の自由度はそのまま残ります。
たとえば、数か月にわたる長期滞在や、大容量のデータ通信を現地で継続的に使う業務など、標準の範囲を超えた使い方が想定される場合には、日本の回線を維持したまま、eSIMで現地の回線を追加するデュアルSIM運用という選択肢があります。日本の電話番号での着信は主回線で受けながら、データ通信は現地の回線でまかなうという使い分けができます。
通常の出張はプランの範囲でまかない、例外的なケースだけ現地の回線を足すという考え方にしておけば、運用の柔軟さを保ちながら、手配の手間を最小限に抑えられます。
端末の紛失・故障に備える
回線と同時に決めておきたいのが、端末側の備えです。海外での紛失は、日本国内と比べて対処の手段が限られるため、渡航してから考えるのではなく、契約の段階で組み込んでおくことが重要です。
ドコモBiz データ無制限には、「ビジネス端末レスキュー」と「ビジネスアクセスマネージャー」が追加料金なく付帯します。ビジネス端末レスキューは、紛失した端末の位置情報検索、利用中断、ロック、初期化といった操作に対応しており、初期設定が不要で、契約後すぐに利用できる点が特徴です。管理者が自身で操作できるほか、NTTドコモのサービスデスクが24時間365日体制で紛失・盗難時の操作を代行するため、時差のある海外からの連絡にも備えられます。なお、ロックと初期化の機能はiOSおよびiPadOSでは利用できないため、端末構成に応じてMDMとの併用を検討する必要があります。
ビジネスアクセスマネージャーは、管理者が定めたルールに基づいてインターネットサイトへのアクセスを制限するサービスです。カテゴリ単位での制限やアクセス先の個別指定をWeb上で設定でき、複数回線への一括設定にも対応しています。海外出張中の端末に対しても、社内で定めた基準を適用したまま運用できます。
故障や水濡れへの備えとしては「smartあんしん補償」があります。交換用電話機の提供や修理代金のサポート、紛失時の検索サービスなどに対応しており、購入日または回線契約日から14日以内の申し込みが必要とされているため、端末の手配と併せて検討しておくと申し込み漏れを防げます。
台数が増えたらMDMで一元管理する
管理する端末が増え、国内と海外の複数拠点に散らばるようになると、1台ずつ状況を確認する運用では追いつかなくなります。そこで有効なのが、MDMによる一元管理です。
MDMを導入すると、どの端末を誰に貸与しているか、OSのバージョンは最新か、必要なアプリが入っているかといった情報を管理画面から把握できます。海外にある端末についても、日本のオフィスから状況を確認し、必要な設定を配布できる点が、拠点が分散した環境では大きな意味を持ちます。紛失時の遠隔ロックや初期化にも対応できるため、前述の備えと組み合わせて設計しやすくなります。
NTTドコモビジネスオンラインショップでは、国産のMDMである「CLOMO MDM for ビジネスプラス」を取り扱っています。iOS、Android、Windows、macOSに対応しており、遠隔での利用状況の把握、機能制限、端末ロック、アプリ配布といった基本機能をひととおり備えています。端末と回線と同時に申し込めるため、購入元が分かれることによるお問い合わせ窓口の分散を避けられる点も、運用面での利点です。MDMの機能や選定基準については、次の記事でくわしく解説しています。
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MDM(モバイルデバイス管理)とは?機能・比較と情シスを疲弊させない製品選定
MDMの基本機能から導入メリット・デメリット、製品の選び方、国内おすすめツール比較まで情報システム担当者向けに解説します。
回線、端末、管理の仕組みをどう組み合わせるかは、出張の頻度や渡航先、社内の管理体制によって変わります。自社に合う構成を具体的に検討する段階では、回線数と利用実態を伝えたうえでお見積もりを取ると、比較検討の材料を揃えやすくなります。
法人向けSIMフリー端末と回線をまとめて契約するには
構成が固まったら、次は実際の手配です。端末と回線を別々の窓口で調達すると、届く時期がずれたり、トラブル時のお問い合わせ先が分かれたりして、出張前の準備が慌ただしくなりがちです。NTTドコモビジネスオンラインショップでは、法人向けの端末と回線をまとめて申し込めるため、渡航前の準備を1か所で進められます。ここでは、利用にあたって押さえておきたい点を整理します。
eSIM対応端末を含む法人向けラインアップから選べる
NTTドコモビジネスオンラインショップでは、iPhone、Androidスマートフォン、ケータイ、iPad、Androidタブレット、Wi-Fiルーター、SIMカード・eSIM、中古スマートフォンといった法人向けのラインアップを取りそろえています。海外出張を想定する場合は、eSIMに対応した機種を選んでおくと、デュアルSIM運用という選択肢を残しながら運用できます。
端末と回線を同時に手配できるため、機種の選定、料金プランの決定、オプションの申し込みを一度の手続きにまとめられます。出張が決まってから準備を始める場合でも、窓口が分かれていないぶん、社内での調整はシンプルになります。
eSIM対応機種を探す際は、機種一覧ページの絞り込み機能が便利です。こだわり条件から「eSIM対応」を選択すると、対応機種だけを一覧で表示できます。
オンラインで24時間365日申し込みができる
手続きはすべてWeb上で完結します。「NTTドコモビジネスオンラインショップ」では、来店することなく、24時間365日いつでもお申し込みが可能です。店舗の営業時間に合わせて担当者が外出する必要がなく、複数拠点の担当者が関わる場合でも日程調整の負担がありません。Webからの申し込みであれば事務手数料も無料とされています(一部対象外があります)。
内容を相談しながら進めたい場合は、オンライン相談やフォームでの相談も用意されています。なお、申し込みから開通までに必要な日数は、法人確認書類の確認状況や申込内容によって変動します。社内へ受け取り日を告知する前に、おおよその目安を窓口へお問い合わせいただくと、出張日程と齟齬が生じにくくなります。
契約時に確認しておきたい条件
申し込みの前に、契約条件も確認しておきましょう。「NTTドコモビジネスオンラインショップ」でのお申し込みは法人名義での契約が対象となっており、法人番号のない個人事業主名義ではお申し込みいただけません。この点は社内で調達方針を決める段階で共有しておくと、手続きの途中で差し戻しになる事態を防げます。
用意するものは、申し込みの種類によって異なります。新規契約とMNP(のりかえ)の場合は、社員証または名刺をスキャンしたPDF、委任状、マイナンバーカードをご用意いただきます。委任状は、手続きを行うのが代表取締役の場合は不要です。他社から乗り換える場合は、現在ご契約中の携帯電話会社でMNP予約番号を取得したうえでお申し込みいただきます。すでに利用している端末を入れ替える機種変更の場合は、登記簿謄(抄)本または印鑑証明書のいずれか1点(発行日より2カ月以内のもの)と、運転免許証またはマイナンバーカード、社員証や名刺または委任状、預金通帳および印鑑が必要になります。
支払い方法は口座振替となり、同一法人名義でNTTドコモとのご契約がある場合は一括請求の手続きも可能です。口座振替を利用する場合は、預金口座振替依頼書または自動払込利用申込書がNTTドコモビジネスオンラインショップから配送されますので、記入して返送する流れになります。書類の準備には社内での取り寄せや押印の時間がかかる場合がありますので、出張の予定が見えた時点で着手しておくと、準備が滞りにくくなります。なお、受付条件や必要書類は変更される場合がありますので、最新の内容は次のページでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
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国内版のSIMフリースマホは海外でもそのまま使えますか?
渡航先の通信事業者が使っている周波数帯に端末が対応していれば、使える可能性が高いといえます。ただし、国内版の端末は日本国内の周波数帯を中心に設計されていることが一般的なため、渡航先によっては対応していない帯域がある場合があります。出発前にメーカーオフィシャルサイトの製品仕様で対応バンドを確認し、渡航先の通信事業者が公開している情報と併せて照らし合わせておくことをおすすめします。
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海外で使う前にSIMロックの解除は必要ですか?
2021年10月以降に発売された端末については、総務省のガイドラインによりSIMロックをかけて販売することが原則として禁止されているため、解除の手続きは原則不要です※1。それ以前に発売された端末を使っている場合は、iPhoneであれば設定アプリの「一般」から「情報」へ進んで「SIMロック」の項目を、Androidであれば「デバイス情報」内の「SIMカードステータス」などを確認してください。なお、日本の回線のまま国際ローミングを利用する場合は、SIMを差し替えないためSIMロックの状態を気にする必要がありません。
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現地SIMの購入と国際ローミングでは、どちらが会社の手間は少ないですか?
通信の単価だけでなく、手配、現地での設定、経費精算、トラブル時の対応まで含めて比べると、国際ローミングが利用できるプランのほうが会社側の負担は少ない傾向にあります。現地SIMの購入は出張者の立替払いになりやすく、精算処理や領収書の確認が出張者の数だけ発生します。NTTドコモビジネスの法人専用プラン「ドコモBiz データ無制限」では、海外200以上の国・地域で最大30GB・15日まで追加料金なしでデータ通信を利用でき、出張のたびに手配や精算を行う必要がありません。適用条件は変更される場合があるため、最新の内容は公式ページでご確認ください。
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海外出張中に社用スマホを紛失した場合はどうすればいいですか?
紛失してから対応を考えるのではなく、遠隔でロックや初期化ができる仕組みを事前に導入しておくことが重要です。ドコモBiz データ無制限に付帯する「ビジネス端末レスキュー」であれば、位置情報検索や利用中断、ロック、初期化に対応しており、NTTドコモのサービスデスクが24時間365日体制で操作を代行するため、時差のある地域からの連絡にも備えられます。ロックと初期化はiOSおよびiPadOSでは利用できないため、iPhoneを中心に運用している場合は「CLOMO MDM for ビジネスプラス」などのMDMと併せて設計しておくと、対応できる範囲を広げられます。
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端末と回線を法人名義でまとめて契約できますか?
可能です。「NTTドコモビジネスオンラインショップ」では、法人向けのスマートフォンやタブレットと、「ドコモBiz データ無制限」「ドコモBiz かけ放題」といった法人専用の料金プランを、同時にお申し込みいただけます。ビジネス端末レスキューやビジネスアクセスマネージャー、CLOMO MDM for ビジネスプラスといったオプションも同じ窓口で手配できるため、購入元が分かれることによるお問い合わせ先の分散を避けられます。お申し込みは法人名義が対象で、支払い方法は口座振替となり、同一法人名義でNTTドコモとのご契約がある場合は一括請求の手続きも可能です。
まとめ
SIMフリー端末は、対応バンドや契約・設定などの条件を満たせば、海外でも利用できます。押さえるべきポイントは3つです。1つ目は、渡航先の対応周波数帯に端末が合っているかを出発前に確認しておくことです。SIMフリーであることと、あらゆる国の電波に対応していることは別の話であり、ここを取り違えると現地で連絡手段を失いかねません。2つ目は、通信手段を通信費の単価だけで比べないことです。手配、現地での設定、経費精算、トラブル時のサポートまで含めて見比べると、会社として扱いやすい選択肢は変わってきます。そして3つ目は、出張者個人の注意深さに頼らず、会社の仕組みとして通信手段を用意しておくことです。海外ローミングが標準で使えるプランを主回線に据え、紛失時の備えと端末管理を一緒に設計しておけば、出張のたびに準備をやり直す必要がなくなります。
「NTTドコモビジネスオンラインショップ」では、海外出張のある企業に向けて、海外ローミングが利用できる法人専用プランとeSIM対応端末をまとめてお申し込みいただけます。24時間365日、いつでもお申し込みが可能で、事務手数料も無料(一部対象外)、Web上で法人契約の手続きが完結します。プランの選び方や必要書類について不明な点がある場合は、お見積もりの段階からオンライン相談をご利用いただけますので、出張の日程調整と並行して準備を進められます。

